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球速を上げるための方法はいろいろあると思いますが、その情報の多さ故に、球速アップの為に何をすれば良いのか分からない、という状態になってしまう人も多いと思います。
そこで、これまでの経験を基に自分なりの「球速アップの為のロードマップ」を作成してみました。
少し長いですが、これを読んで、今後の練習の方向性を考えるきっかけにして頂ければと思います。
目次
球速アップの為の必須要素
いきなりですが、僕が考える「球速を構成する要素」を言います。それは、
球速=ピッチングメカニクス×身体能力(×体重)
です。
球速というものはこのような形で表すことができると思います。
具体的な例を挙げていくと分かりやすいかと思います。
(例)
〈アロルディス チャップマン〉
169km/h
=身体能力(高)×ピッチングメカニクス(良)(×体重(重))
〈室伏広治〉
131km/h
=身体能力(高)×ピッチングメカニクス(悪)(×体重(重))
〈一般的な中学生投手〉
速い部類で130km/h
=身体能力(低)×ピッチングメカニクス(普or良)(×体重(軽))
こうした例からも分かるように、球速を出すためには、身体能力とピッチングメカニクスのどちらか片方ではなく、その両方の能力を高めていく必要があります。
そこで、身体能力とピッチングメカニクスというものをそれぞれ細分化していき、それぞれの要素を伸ばすアプローチをしていけば、自ずと球速は上がるはずです。
ここから、身体能力とピッチングメカニクスというものを、より細かく見ていきます。
まずは、ピッチングメカニクスから見ていきましょう。
球速アップの為のピッチングメカニクス
ピッチングメカニクスの基本的な構造
ピッチングメカニクスを良くする目的は指先(ボール)を加速させることですよね。
ボールを加速させる(速い球を投げる)為の最も基本的な構造は「強い力で前へ進み、強い力で急激に止まる」です。
これも例を出すと分かりやすいですが、このようなイメージです。
強烈な前への推進力 → 下の部分の急激な減速(ブロック)
進んでいる台車が大きな岩にぶつかり、上の箱が飛び出していきます。
この箱をそれぞれ上半身、下半身と見立てると、下半身の強烈なブロック動作により、ボールを持った上半身を加速させることができるということが分かります。
ピッチングにおいては、そこに「肩と腰の捻転差」、「腹筋による加速」という2つの要素が加わることで、速い球を投げることのできるフォームになっていきます。
必要な4つの要素
先程の「前への推進力→ブロック」という流れを理解したら、実際のフェーズごとの動きを細かく見ていきます。
ピッチングフォームは4つの要素から成り立っていると思います。それはこの4つです。
- 強烈な推進
- 肩と腰の捻転
- 着地足の伸展動作
- 腹筋での加速
ではここから、それぞれのフェーズごとに解説をしていきます。
①強烈な推進力
まずは推進力。ここの強さがボールのスピードに大きく関わってくると思います。
ここの強さがどこから生まれてくるかというと、地面に接地している軸足であり、軸足の股関節、膝関節、足関節の爆発的な伸展(トリプルエクステンション)により、大きな推進力を得ているのだと思います。
体全体を速いスピードに加速していくには、言うまでもないですが、下半身の強いパワーが必要になってきます。
強い推進力を生み出す為の軸足の具体的な使い方はこちらの記事にて詳しく解説しています。
②肩と腰の捻転(Hip to shoulder separation)
次に、前足が地面に着いた時のフェーズ。
このイラストでは分かりづらいかもしれませんが、腰はほぼ回りきっていても、胸(両肩を結んだライン)は三塁ベース方向を向いたままです。
この「ねじれ」が元に戻ろうとするときに、ボールが加速されていきます。このフェーズでは、大きな捻転差を作るために「胸郭の柔軟性」が不可欠になってきます。
③着地足の伸展動作
次に、着地足での伸展の動作です。台車のイラストの岩に当たる部分ですね。
ここでは強烈な推進力を片足一本でストップさせ、上半身を前へ加速させていきます。
その為に強い下半身の力が必要になります。
また、前進する力を受け止めるだけではなく、伸展していくことによって、上半身をさらに加速させていきます。
着地足の具体的な使い方については、こちらの記事にて解説しています。
④腹筋での加速
これは、前足の着地後~リリースにかけてのフェーズになります。
③のフェーズの際に貰える地面からの力を受け取りつつ、②で作られた捻転差が急激に元に戻っていくことで、さらに指先を加速させていきます。
このフェーズの為には一度引き伸ばされた体幹を元に戻すために、強い腹筋が必要になってきます。
ピッチングメカニクスまとめ
このように、速い球を投げるためのピッチングメカニクスは、
「前への推進」
↓
「着地足の伸展による上半身の加速」
という大きな骨組みの中に、「捻転差」、「腹筋での加速」が加わることによって構成されていることが分かります。
これがピッチングメカニクスの本質的な部分だと思います。
よく指導の中で見られる、「軸足が折れてはダメ」「開いている」という指導は部分的な事柄であり、あくまで方法論であると思います。
「強い推進力を得るために軸足が折れてはダメ」「捻転差からの切り返しが必要だから、腰と肩が同時に開いてしまうのはダメ」というように、しっかりとした理由付けをしてフォームを改善していくべきです。
なので個人的には、方法を知ったところで本質的な部分を理解していないと球速アップは難しいと思います。
次の章では、今までの解説で理解したピッチングに必要な動きを体現するための、身体作りの方法を解説していきます。
球速アップの為の身体作りの方法
冒頭部分で、球速=身体能力×ピッチングメカニクスと書きましたが、それだけ聞いても身体能力という言葉があいまい過ぎて、具体的にどのような能力か分からないですよね。
先程の章でのピッチングメカニクスについての解説を元に「球速アップに必要な能力」について解説していこうと思います。
僕の考える球速アップに必要な身体能力はこの3つです。
- パワー…球速を出すにあたってのエンジンとなる
- 柔軟性(機能)…怪我の予防。適切に関節が動くようにしておく
- 連動性…各部位単体で出せる力は弱いので、それぞれの力を一つに集約する為のもの
身体作りでは、この3つの要素を伸ばすようトレーニングやドリルを積んでいけば良いと思います。
このように必要な要素を細分化し、明確にしていけば、やるべきことが見えてくると思います。
ここからはまた、それぞれの伸ばし方、伸ばすための考え方の解説に移っていこうと思います。
パワー|球速アップの為の土台作り
まずは、パワーについての解説です。
パワーと言っても、投球動作という一瞬の動きに必要なのは、なんといっても瞬発力です。
1秒未満という非常に短い時間の中で、どれだけ強い力を出せるかがカギになってくるので、トレーニングの方向性は、瞬発力を上げるということになってきます。
上半身下半身、別々に解説していこうと思います。
下半身のトレーニング
下半身は投球動作の中で、「体全体を強烈に前へ前進させる」、「前進を急激にストップさせる」ことが主な役割となります。
特に、前へ前進する動きには股関節、膝関節、足関節のトリプルエクステンションが不可欠ですが、このトリプルエクステンションはジャンプやダッシュをする際に分かりやすく現れます。
〈トリプルエクステンションとは〉
股関節、膝、足首を爆発的に伸展(伸ばす事)すること。
主に、ジャンプやダッシュで分かりやすく現れるが、ピッチングでも強い推進力を生む為には必須の力。
「投手は足腰」と言われる理由はここにあり、ダッシュやジャンプ、クリーン等もこの動作を強化する為にやる pic.twitter.com/rAKyL1D5mA— 投げ屋 (@throwhard67) February 11, 2020
なので、前への推進力を強くするためには、股関節伸展筋群を重点的にトレーニングし、ダッシュやジャンプ力が伸びるように鍛えていくことが有効であると言えます。
その為のメニューがこちらです。(太字は重点的に取り組むべき種目)
【ウエイトトレーニングによる土台作り】
バックスクワット、デッドリフト、 ルーマニアンデッドリフト、
ヒップスラスト、 ブルガリアンスクワット、
シングルレッグデッドリフト、リバースランジ
【クイックリフトによるパワー養成】
クリーン、ハイプル、スナッチ
【ジャンプトレーニングによるスピードの獲得】
ボックスジャンプ各種(両足、両足90度回転、片足、片足90度回転)
立ち幅跳び各種(両足正面、片足正面、両足横、片足横、3連続)
バウンディング
【プライオメトリクスによるスピードの獲得】
デプスジャンプ(上方向、横方向)等、各種
【ダッシュによるスピードの獲得】
10~30mダッシュ
基本的な考えとして、筋肉が1立方センチメートルあたりの出せる力は決まっているので、体に付いている筋肉が多ければ多いほど大きな力が発揮できます。
その為、最低限の筋量確保の為にウエイトトレーニングで筋肉を付けていきます。
その次に、その付けた筋肉がより短い時間で力を発揮できるよう、トレーニングをしていきます。
それがクイックリフトから下の部分ですね。
球速アップにはこの工程が非常に重要ですが、多くの投手がこの工程をせずウエイトトレーニングだけに励み、結果として球速が変わらず、「ウエイトは意味がない」という思考に陥りがちです。
ウエイトトレーニングとジャンプやプライオメトリクスだけに取り組んだ投手よりも、ウエイトトレーニングとクイックリフトだけに取り組んだ投手のほうが球速がアップしたという研究もあるので、高重量のウエイトトレーニングとクイックリフトをメインにトレーニングをプログラムしていっても良いかもしれませんね。
僕の感覚ですが、これらのメニューを組む時は、ウエイト7割、クイックリフト2割、ジャンプなどの自重での爆発的トレーニング1割という感じでメニューを組むと良いと思います。
〈関連記事〉
- 球速アップの為の下半身ウエイトトレーニング|種目と目標重量
- 投手の球速アップに直結する瞬発力トレーニング|ハイプル
- 144km/h以上出す投手達のウエイトトレーニングの数値|Top Velocityの選手の数値を調べてみた
にてさらに詳しく解説しております。
上半身のトレーニング
上半身のトレーニングは下半身のトレーニングとは異なり、胸郭などの柔軟性を失わないよう配慮しつつ、行っていきます。
投球動作のエキセントリックな動きに耐えられ、さらにそこから加速させることのできるようにします。
上半身トレーニングメニュー(太字は重点的に取り組むべき種目)
【ウエイトトレーニング】
前面…ベンチプレス、ローテーショナルダンベルプレス
インクラインローテーショナルダンベルプレス
後面…デッドリフト、チンニング、シーテッドロウ、1ハンドロウ、
インバーテッドロウ、リアレイズ、プルオーバー
腹筋…ロシアンツイスト、アブローラー、
レッグレイズ(懸垂のようにぶら下がって)
【メディシンボールでのパワー養成】
オーバーヘッドスロー(サッカーのスローインのような形)、後方投げ、
前方投げ、横投げ(バッティングのような形)
このようになります。
上半身のトレーニングにスピード系のトレーニングがないのは、メディシンボールのトレーニングの時にメディシンボールの重さを軽くすれば、ある程度のスピードのトレーニングになることと、一番は実際に投げることがスピードのトレーニングになっているからです。
しかし、driveline baseballのように通常よりも軽いボールを投げたり、プルダウンなどの助走をつけての全力投球するなどの練習方法もあるので、自分のコンディションを考えて実施する分には有効だと思います。(その際は怪我に十分注意してください。)
上半身のウエイトトレーニングを前面、後面と分けて書きましたが、肩甲骨のアライメントが崩れないよう、前面と後面の鍛える割合を前面4割、後面6割くらいにするとよいと思います。
柔軟性(機能)|安全に球速アップする為に
次に要素の2つ目、柔軟性、機能です。
これらを整備していないと球速が出ないだけでなく、ボールに正しく力が伝わらず、最終的には怪我をすることになると思います。
こうした柔軟性や機能といったものが正常に動くことで初めて、日頃のトレーニングが生きてきます。
中でも、特にケアしておきたいのが肩関節、股関節、胸郭の3つです。
球速アップの為にケアしておくべき部位とその方法
〈肩関節〉
エクスターナルローテーション(1st,2nd,3rd)、フルカンエクササイズ、ウォールスライド、スキャプラープッシュアップ
〈股関節〉
開脚、内旋ストレッチ、内旋ターミナルフリック、腸腰筋ストレッチ、中殿筋エクササイズ(股関節外転)
〈胸郭・胸椎〉
トランクローテーション、胸郭回旋エクササイズ各種(四つ這いから肩を地面に着いて空を見上げるように胸郭を回旋等)
もちろんこれだけではないですが、簡単ににこんな感じです。画像付きのほうが分かりやすいと思うので、後日詳しくアップしようと思います。
肩甲骨周りのケアについての関連記事はこちら
連動性|球速アップに直結
最後に連動性についてですが、連動性は先程の上半身、下半身のトレーニングについて書いた部分の種目をやれば、だいぶカバーできると思います。
クイックリフトやジャンプ、メディシンボール投げ等のことです。
気を付けるべき点としては、胸郭を固めた形でのウエイトトレーニングだけに偏らないことです。
こうしたトレーニングも筋量確保の為や筋力向上のためには必要だと思いますが、実際、それだけしかやらないと動きづらくなります。
なので、動きづらくならないためにも、胸郭を固定しない、メディシンボールでのトレーニングやウエイトトレーニングであれば、ローテーショナルダンベルプレスなどを積極的に行っていくと良いと思います。
連動性を損なわずに行えるトレーニングについてはこちらの記事が参考になるかと思います。
球速アップの為のロードマップまとめ
以上が球速アップの為のロードマップです。「球速アップするための方向性が少しでもイメージできた」と思って頂けたら幸いです。
今回の記事をまとめると、
球速=ピッチングメカニクス×身体能力
この中の最も細分化された6つの要素、「推進力」「捻転差」「ブロック」「腹筋での加速」「パワー」「柔軟性(機能)」「連動性」に適切なアプローチをしていけば必ず球は速くなると思います。
球が速くならないのは、これらの要素ではないものに対してアプローチしてしまっているから、ということなんだと思います。
今回の記事を読んで、少しでも球速アップする為の道筋が見えてきたと感じて頂けたら幸いです。
これからも更新していくので是非読みに来てください。
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それではまた。
関連記事はこちら
〈ピッチングメカニクス〉
〈下半身トレーニング〉
- 球速アップの為の下半身ウエイトトレーニング|種目と目標重量
- 投手の球速アップに直結する瞬発力トレーニング|ハイプル
- 144km/h以上出す投手達のウエイトトレーニングの数値|Top Velocityの選手の数値を調べてみた
〈上半身トレーニング〉
〈機能〉
〈連動性〉