こんにちは、Velo’s blogです。
今回は「投手が瞬発力のトレーニングをする必要性」ということについて書いていきたいと思います。
このブログを読んで下さっている方々は、普段どのようなトレーニングを実施しているでしょうか?
ポール間走等のランニングがメインという人もいれば、ウエイトがメイン、体幹トレーニングがメイン、等々いろいろな組み方があると思います。
選手によって、どのようなトレーニングをしているかは様々であると思いますが、この記事では、球速を上げる為のトレーニングの方向性について、僕なりの考え方を書いていこうと思います。
目次
ピッチャーのトレーニングの方向性は「瞬発力UP」
「ピッチャーに長距離の走り込みはいるのか」ということがよく話題になりますが、皆さんはどうお考えでしょうか。
いきなりですが、結論を言います。
投手に長距離の走り込みはいりません。
なぜなら、球速アップを目指すピッチャーがトレーニングをする大きな目的は「瞬発力UP」の為だからです。
球速アップを目指すなら、5㎞、10kmの長距離走も、400m走も全く必要ありません。
言わずと知れたメジャーリーガー、ダルビッシュ有投手もこのようなツイートをしています。
ちなみにカブスは今年からストレングスのスタッフが大きく変わったんですが(医師免許持ちも数人)、全体ミーティングで2マイルほどのジョグもしないよう通達されました。ランニングメニューも2日に1回で50m以内で色々なバリエーションでやってますね。
— ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) February 20, 2020
軽いエアロバイクとかならいいんでしょうが、彼は「疲れるだけだから、そんなんやる暇あるなら帰って家族とゆっくりしたり、休め」と言っていました。
彼はNFLから引き抜かれた非常に優秀な人間です。— ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) February 20, 2020
たまに、「体の調子を整えたい」、「体をダイナミックに動かしてほぐしたい」という目的で100m、200m(ポール間走)を走るというのなら良いとは思います。
しかし、「球速アップする為に200m以上のランニングに取り組む」のでは、球速が上がる望みは薄いと思います。
これからその理由を解説していきます。
ピッチングの特性|投手には瞬発が必要
まず、「投手がどのようにトレーニングを組んでいくべきか」ということを考えていくにあたって、「ピッチングの特性」について理解していかなければいけません。
ピッチング動作を単純に考えてみると、投球の開始から投げ終わりまでにかかる時間は、どんなに長くても10秒以下です。
そして、その中でボールを加速させる為に出力している時間はもっと短く、約1秒、もしくはそれ以下の0.何秒という世界で行われています。
その1秒にも満たない時間の中で、ボールを最大限加速させるので、その一瞬にどれだけ大きなパワーを発揮できるかが重要になってきます。
そして、まさにこの「一瞬にどれだけ大きなパワーを発揮できるか」ということが瞬発力であり、その能力を向上させていくことが球速アップするために必要なトレーニング、基本となる考え方になります。
こういった理由から、瞬発力の向上に繋がらないような長距離走ではなく、短い距離(30m以下)のダッシュなどの瞬発力に特化したトレーニングをしていくことが好ましいと言えます。
投球フォームの中での瞬発力
先程の解説で、ピッチングにおいては瞬発力が必要だということを理解してもらえたかと思います。
ここからは具体的に、「体のどの部分の瞬発力が必要なのか」ということについて解説していきます。
球速アップの為のロードマップ|投球フォームと身体作りの方法を解説でも解説していますが、ピッチングは、
「推進」→「捻転」→「ブロック」→「腹筋での加速」というフェーズがあることを紹介しました。
この中でも、「推進」と「腹筋での加速」という2つの加速の出力を上げることによって、よりブロック動作が生き、球速向上に繋がっていきます。
※弱い推進力にブレーキをかけても、あまり前へ加速しませんよね。
そこで、軸足での強い推進力を得る為には、トリプルエクステンション、腹筋で加速をする為には腹筋のトレーニングが必要になります。
〈トリプルエクステンションとは〉
股関節、膝、足首を爆発的に伸展(伸ばす事)すること。
主に、ジャンプやダッシュで分かりやすく現れるが、ピッチングでも強い推進力を生む為には必須の力。
「投手は足腰」と言われる理由はここにあり、ダッシュやジャンプ、クリーン等もこの動作を強化する為にやる pic.twitter.com/rAKyL1D5mA— 投げ屋 (@throwhard67) February 11, 2020
このように、ピッチングの特性を考え、要素ごとに分解し、必要な瞬発力を理解することで、無駄な走り込みを無くしていくことができると思います。
というか、そもそも「長距離走をしよう」という発想にならなくなると思います。
それでは、ここからはトリプルエクステンションや腹筋での加速を強化するのに、おすすめのトレーニングを紹介していこうと思います。
ピッチングに必要な瞬発力を鍛えるトレーニング5つ
メディシンオーバーヘッドスロー
これは腹筋での加速を強化するトレーニング。
腹筋の収縮により、腕が走る感覚を養いながら、腹筋のパワーも付けることができるおすすめのトレーニング。
〈メディシンボール投げ〉
個人的に球速アップに直結したおすすめのドリル・着地足伸展で起きる地面からの反発を手のメディシンボールへ上手く伝える
・引き伸ばされた腹筋をリリースのタイミングに合わせて収縮させ、手を走らせる同じ感覚で野球ボールも投げれば必ずボールはいきます。 pic.twitter.com/e9gZfL011k
— 投げ屋 (@throwhard67) February 4, 2020
重さは2kgか3kgで良いと思います。
慣れてくれば1kg、もしくはそれ以下の重さのボールを片手投げるのも良いと思います。
※あくまでも、腹筋の収縮によって腕が振られる感覚で投げることが前提です。
〈やり投げJohannes Vetterのトレーニング〉
やり投げで90m以上を投げるドイツ記録保持者これは推測だけど、高島さんのyoutubeチャンネルにもあったり、僕も以前ツイートした通り、腹筋で指先を加速させているように見える。
ちなみにこのボールは3kgですが、普通の投手だったら1kgでも精一杯ですね pic.twitter.com/7tzOExPGNL— 投げ屋 (@throwhard67) February 7, 2020
10mダッシュ
トリプルエクステンションを強化するのに、1番身近なトレーニング。
50mや100mダッシュなどに取り組んでいる選手は多いと思いますが、個人的には瞬発力を向上させる目的でランメニューをするなら、10m走が圧倒的におすすめです。
50mや100m走でも、最大のパワーで走れることは走れますが、それを何十本も持続させるのは厳しいですよね。
マックスのタイムで走ることができるのは、せいぜい3本程度だと思います。
それに比べ、10m走なら10本~20本くらいは走れます。しかも、10mという超短距離の為、肉離れ等の怪我をするリスクも低いと思います。
これらの理由から10mダッシュはおすすめです。是非、120%の出力で走ってみてください。
立ち幅跳び
トリプルエクステンションを強化する為のトレーニングとして、次におすすめなのが、立ち幅跳びです。
これは動きでいうと、「直立の状態→股関節、膝関節、足関節を曲げ、沈み込む→爆発的な伸展により、遠くへ跳ぶ」
というトリプルエクステンションの動作そのままなので、トリプルエクステンションの強化には非常に有効なのが分かりやすいと思います。
目標の数値としては、身長+110㎝を目指すと良いと思います。
また他のバリエーションとして、通常の立ち幅跳びの他に、三連続ジャンプ、ラテラルジャンプ(片足で横へ跳ぶ)、両足で90°回転しながら跳ぶ、など様々なやり方があります。
また、ボックスジャンプでのトレーニングもおすすめです。
連続ジャンプなど、よりバリエーションが増やせて、より高強度なトレーニングが可能になります。
また、最高球速144km/h以上の投手たちの立ち幅跳びや垂直跳びの記録をまとめた記事も書いています。
参考までに。
メディシンボールバックスロー
この種目は、1つ目に紹介した腹筋で加速する為の種目とは違い、トリプルエクステンションの強化に有効なものです。
やり方は非常に簡単で、下のツイートのように、少ししゃがみ、そこから後方に勢いよく投げるだけです。
注意点としては、股関節から折り込んでいき、ヒップヒンジを使って投げることです。
目安としては、3kgのメディシンボールで最低16mは投げたいですね。余裕のある人は18m以上投げられるようにすると、さらにポテンシャルの大きな選手になれると思います。
メディシンボール投げ、17m40cmで2位でした。
ライル(@lyle_13qbb )が18m90cmで1位。バケモン。#150キロプロジェクト pic.twitter.com/FfhJuuOpYV— 前沢 力【qoonins#1】@YouTube始めました (@riki_maezawa) March 6, 2020
NISHIのメディシンボールはの割れにくいのでおすすめです。
ハイプル
最後になりますが、トリプルエクステンションの強化をするのに1番効果的な種目がこちらです。
今まで紹介したトリプルエクステンションの強化の為のメニューは、どの種目も非常に良いメニューですが、1つ欠点があります。
それは、負荷をほとんど変えることができないという点です。
負荷を変えられないということは、言い換えると、体がその重さ(メディシンボールや体重)に慣れてしまうということです。
そうすると、刺激に慣れ、それ以上強い力を発揮しづらくなってしまい、トレーニング効果も薄れてしまいます。
※「漸進性の原則」というやつですね。
そんな欠点を補ってくれるのが、ハイプルなどのクイックリフトと呼ばれる種目です。
〈ハイプル〉
動画の選手は日本記録保持者のタンク村上こと、村上英士朗選手 @tank_murakami
重量は225kgハイプルは肘を返さないので、肘や手首に関してデリケートな投手も取り組むことができ、安全に全身の瞬発力を鍛えられます。僕はこれをやってメディシンボールバックスローが爆伸びしました pic.twitter.com/Bv5vDxa01A
— 投げ屋 (@throwhard67) February 11, 2020
優先順位的には、クイックリフトを最優先にすべきだと思います。
根本的な体の使い方は同じなので、クイックリフトの数値が伸びれば、メディシンボールバックスロー、ジャンプ、10mダッシュの数値もほぼ自動的に伸びていくはずです。
ハイプルについてのさらに詳しい記事はこちら
ちなみに、「握力が無くて、高重量でハイプルができない」という人はリストストラップを使うと良いですよ。
僕も70キロくらいまでは素手でもハイプルができますが、それ以上重くなると滑ってしまうので、とても重宝しています。
投手が瞬発力のトレーニングをする必要性まとめ
いかがだったでしょうか。
最近では、「ピッチャーに走り込みはいらない」という風潮になりつつありますが、この記事を読んで、その理由が少しでも分かって頂けたら幸いです。
「このキツイランニングを乗り越えたら、きっと球が速くなるはずだ」と、なんの根拠もなしにトレーニングに取り組むことを止め、「この能力を獲得するためにこのトレーニングをする」という思考回路を持つようになれば、球速アップに繋がると思います。
最後に、今回紹介したトレーニングは、ある程度フォームが掴めたら、収縮スピード、最大出力を意識して取り組んでみてください。
今回紹介したトレーニングの効果を最大限得るためには、何よりもまず、土台となる筋力や筋量が必要になります。
土台作りの為のトレーニングは以前まとめたのでこちらも是非お読みください。
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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それではまた。